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もしもこの世から銃がなくなったら




もしもこの世から銃がなくなったら、というBBCの記事を紹介しようと思う。日本人ならば多くが銃は規制されてしかるべきと考えているのではないかと思う。すると結論としてはさして目新しいことも書いていないのだが、具体的な数字がおもしろかった。あと、忘れがちだが役に立っている点もある。以下は翻訳である。

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もしもこの世から銃がなくなったら


まずはイデオロギーを抜きにして、もしもこの世から銃が無くなったら何が起きるのかを見てみよう。

2018年3月24日、アメリカ。200万人を超える人々が銃規制を求めてデモを行った。銃に関する問題の解決法は聞く人によって全く違っているようだ。ある者は銃を携行する権利の廃止をもとめ、別の者はもっと銃が必要だという。

しかしもしも、この議論が突如として意味をなさなくなったら何が起こるだろうか。つまりこの世から銃が無くなったとしたらどうだろう。この思考実験は議論からイデオロギー、政治的立場を省いてくれる。つまり、銃規制により我々は何を得て何を失うのかを合理的に判断する助けとなる。我々は銃を規制するべきだろうか。

銃が消失することによる明らかな効果は、銃による死者が居なくなることだ。世界では毎年およそ50万人が銃の犠牲となっている。先進国の中で最も高い死者数を出しているのがアメリカである。アメリカの市民は3000万-3500万丁の銃を保有しており、同国での銃による死者数はその他の先進各国の平均の25倍にもなる。

「この国では毎日100人が銃の犠牲になっています」。デューク大学医科大学院のジェフリー・スワンソンは語る。「銃がなければ多くの命が救われるでしょう」。そして、この救われたはずの命のリストの一番上は自殺によるものである。2012年から2016年の間に銃により命を落とした17万5700人のうち60%が自殺によるものだった。2015年に限ると4万4千人が銃で自殺をしている。銃による自殺の試みは80%が成功している。「残念なことに生存確率は非常に低いのです」。トーマス・ガボールは語る。彼は"Confronting Gun Violence in America"の著者である。

さらには、自殺の試みに失敗して生存した者のほとんどは、再び自殺を図ることがない。「ある者は死ぬことを断固決意しており、死ぬための別の方法を探す。しかし他の者は衝動的な自殺志願者で、その後は幸福で生産的な人生を送ることになる」。"the Pacific Institute for Research and Evaluation"のテッド・ミラーは語る。

銃規制


オーストラリアの銃規制の歴史は、「銃を規制することで死者数を劇的に減らすことができる」という事実を示している。1996年、マーティン・ブライアントはタスマニアのポートアーサー・ヒストリックサイトにて銃を乱射、35人を殺害した。この事件はオーストラリアにとってのターニングポイントとなった。人々は政治的立場を超えてセミオートのショットガンとライフルの規制を支持し、すぐに新法が施行された。政府は新たに禁止された銃を市場価格で買い取り、それを廃棄した。これにより国内に出回る銃の30%を回収することに成功した。

シドニー大学のフィリップ・アルパースよれば、データは銃規制法が死亡者数に与える影響が甚大であることを示している。銃規制以外に考えられる要因や、そもそもが減少傾向にあった自殺率、殺人率の推移を考慮してさえである。「銃規制の結果、銃による死者数は50%減少した。その後22年間再び上昇する様子は見られない」。

自殺がその減少のうちの大きな部分を占める。実に、銃による自殺者は80%の減少を見せた。「自殺者の減少にわれわれは驚嘆した。加えて、銃以外の何か別の手段を選択するという傾向も見られなかった。すなわち、自殺や殺人を意図する者が銃以外の武器を使ってまで目的を遂行しようとする傾向を示す証拠は見つからなかった」。

何も自殺者数の減少だけにとどまらない。オーストラリアにおける銃による殺人数も、銃規制を受けて50%以上減少した。さらには、これはしばしばアメリカの批評家たちが持ち出す理論だが、殺人者は銃が無ければ他の手段を用いてでも目的を遂行するかというと、オーストラリアではそういう例は見られなかった。前述のように銃による殺人は減少したが、銃以外の手段による殺人件数は銃規制前からずっと横ばいで推移している。「殺人者は別の武器を選択しない」、アルパースは語る。

この例は家庭内暴力において特に顕著である。銃を利用可能な状態にある男性を夫に持つ妻は、銃により殺害される確率がそうでない場合と比べて5倍から8倍も高かった。銃が無くなれば、怒りに任せてわれを忘れた者がパートナーに致命傷を与える確率が大幅に減少する。それどころか、そもそも全く攻撃的にならないかもしれない。議論はあるものの、ある研究によれば銃の存在そのものが男を攻撃的にする。この現象はウェポンズ・エフェクト(weapons effect、武器効果)と呼ばれる。

毎月50人の女性がパートナーにより射殺されているアメリカでも、銃規制はオーストラリアの場合と同じような結果をもたらすだろうか。アメリカであってもそのほとんどの犯罪の傾向はイギリスや西ヨーロッパ、日本などの先進国と比べた場合と変わらない。しかし殺人事件に限ってはアメリカでの発生率が他の先進国の平均と比べた場合に4倍を示す。これはとりもなおさず、アメリカでは暴力に用いられる手段が銃であることに原因があるように思われる。銃が武器として用いられた場合、そうでない場合と比べて死亡するリスクは7倍に跳ね上がる。

「イギリスで、酩酊した衝動的で激高した分別の無い若者2人がパブから出て口論している様子を思い浮かべてください。どちらかが青あざを作るなり、鼻血をだすなりの結果になるでしょう」。スワンソンは語る。「しかしこれがアメリカならば統計的にどちらかの男性は拳銃を持っていて、死体を見る結果になる」。すなわち使用される武器が結果に影響を与える。この比較は"weapons instrumentality effect"(武器介在効果)と呼ばれる。「人を殺すのに銃ほど効果的な武器は無い」。ニューヨーク州立大学のロバート・スピッツァーは語る。

オーストラリアでの場合と同様、アメリカでも銃規制が死者を減らすというデータがある。2017年に行われた調査にて、銃規制の厳しい州の方が銃による殺人件数が少ないという結果が出た。また2014年にはトラウマが原因で入院している未成年者の調査が行われ、銃規制が厳しいほど子供たちは安全に暮らせるという結果が出た。

また、銃は警察とのやり取りを危険にする。逮捕の際にけが人が発生する確率はアメリカでも、カナダのブリティッシュコロンビアでも、西オーストラリアでも変わらない。しかし、この3国の警察官はみな銃を携行しているのにも関わらず、カナダとオーストラリアではほぼ誰も死なない。アメリカはどうかと言うと、毎年1000人の市民が警察によって殺されている。もちろん警官を巻きこんだ応酬に発展する理由は複雑で、しばしば非白人に対して人種差別的なバイアスがかかる。このバイアスはアフリカ系の警官に対しても同様だ。しかしこれらの事件のうちの多くは、銃が無ければ防げたはずのものだ。

「多くの場合警察による凄惨な行為は、単純に彼らが撃たれるのではないかという恐怖によって引き起こされている」。ミラーは語る。「もし警察が車を止めるたびに銃を警戒しなければならないとしたら、取り締まりは一触即発です」。銃規制により警察の安全も確保されるのだ。2016年に警官によって射殺された人々の半分以上が武装していた。そしてその多くは警官の発砲に呼応して応戦している。

銃規制はまた、国内での乱射テロの発生も抑えられると考えられる。2017年にはアメリカ、カナダ、西ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドで発生した2800件以上の事件が調査され、多くの人を殺す手段として銃がずば抜けて効率的であることが明かされた。銃は実に爆発物や乗り物を使った場合をもしのぐ。調査対象となった事件のなかで銃が使われた例は10%にとどまったが、合計の死者数のうちの55%が銃によるものだった。アメリカでもテロリストは銃を好む傾向にあり、9/11以降のテロ攻撃16件のうち2件を除く全てで銃が用いられた。「例えばパイプ爆弾のような初歩的な爆発物を作ることでさえ簡単ではない」。マーケット大学のリサ・ブルークスは語る。「最終兵器である銃へのアクセスを難しくすることでテロ行為に及ぶことを難しくすることができる」。

攻撃性はヒトの持つ本性だと歴史が示している。しかし紛争に必ず銃が必要だという物ではない。「ルワンダの虐殺は圧倒的な暴力が銃無しで行われている」。ウェイクフォレスト大学のデービッド・ヤマネは語る。地球上からすべての銃が無くなるという極端な思考実験の中でさえ、戦争と内戦が止むことはない。だからと言って槍や剣、弓といった原始的な武器に帰るというよりは現代の国家は爆発物、戦車、ミサイル、化学兵器、生物兵器を用いるといった手段へとシフトするだろう。(しかし核兵器はどうかと言うと、破壊的すぎて現実味がない)

国々はまた、新しいタイプの武器を開発し、銃の無くなった空白にあてがうかもしれない。豊かで強い国々がまず効率的な武器を開発するだろう。これは戦争の形は変わるかもしれないが、「かならずしも国家間の力関係が変わることを意味するわけではない」、ブルークスは語る。しかし非政府組織においては話が変わる。ソマリア、スーダン、リビアといった国々では銃は身近で、もしもこれらの武器がある日忽然と消え去ったならば民兵たちは交戦能力を失うだろう。「高価な武器を持たないという点が非政府武装勢力のひとつの特徴です。彼らは簡単に手に入り、持ち運びでき、維持管理できる武器が必要なのです」。民兵の力を削ぐことはいいことかもしれない。しかし一部には政府の圧政や暴力に対抗するために組織された武装勢力も存在する。

もしも銃が無くなったらそれは動物にも影響を与える。一方では絶滅危惧種の密猟やレクリエーションハンティングを抑制する働きを与えるが、他方では人による動物の制御を難しくするだろう。例えばアライグマ、ゾウ、毒ヘビ、シロクマなどから人を守ることが難しくなる。銃の所有に関しては様々な正当な理由が存在する。とくにオーストラリアの農業界などはかつてのアメリカの西部開拓時代のような状況がある。彼らにとって銃は商売道具なのだ。

銃はまた、侵略生物の管理にも欠かせない道具となっている。ネコやブタ、ヤギやその他の外来生物は環境を保全する目的で毎年何千頭も射殺されている。これは特に島のような孤立した環境で顕著だ。銃を排除すると既に厳しい戦いを強いられているこの活動はより難しくなり、さらにはより非人道的な手段を選ぶことになる。怪我を負った家畜の安楽死などもより残酷な結果を招くだろう。「病んだ大型動物を前にして手斧は銃の代わりにはならない」。アルパースは言う。

銃産業の担う経済と生活の質


銃は殺すために作られたものだが、個人の財産や社会経済にも影響を与えている。もし銃が無くなればアメリカが最も大きな損失を被る。アメリカの銃経済の規模は200億ドル(2.2兆円)で、加えて銃に関わる周縁の経済が300億ドル(3.3兆円)となる。アメリカの経済にとって500億ドル(5.5兆円)の損失は全体からすれば大したことはない。

実は、銃を無くした場合の経済的利益はそれほど期待できない。銃による死傷者とけが人にかかるコストが年間107億ドル(1.2兆円)、銃が存在することによって発生するその他のコストを考慮しても200億ドル(2.2兆円)である。しかし「アメリカにおいて銃による暴力のもたらすコストは直接の医療費だけではない。裁判費用や被害者の収入、さらには生活の質を犠牲にする」。トーマス・ガボールは語る。

確かに経済に与えるインパクトはそれほど大きくはないが、もっと目に見えない部分で得るものがあるとミラーは指摘する。銃が無くなれば多くの人が安全を感じるようになるだろう。「我々は、次の世代が自分の家の寝室から聞こえた銃声によるトラウマで苦しむ様子を見なくて済むようになる。これは我々の子どもたちの精神衛生にとって大きな違いとなる」。近年学校、映画館、ナイトクラブ、または路上など、アメリカ人が公共の場で銃撃されるという恐れが高まっている。滅多に起きないことだとは言え、幾度となくおこる無差別乱射事件は社会の連帯感を断ち切ってしまう。人々の抱く安心感やお互いに対する信用が崩れてしまう。このことは社会や精神に大きな影響を与える。

銃の無くなった世界で多くの人はほっと肩をなでおろすかもしれないが、中には逆に不安に思い、武器の無い生活がとても危うい物に感じる人もいる。「護身用の銃が必要だと主張する人々は、体格のいい誰かや、ナイフや銃をもった誰かに対抗するために銃を手元に置く。銃を取り除くということは潜在的被害者から、強い攻撃者に対抗する手段を奪うことを意味する」。ヤマネは語る。

銃が本当に人を守ってくれるかという点には議論が残る。この話題に関してはっきりと結論はできないまでも、今のところ参考にできるデータは逆の結果を示している。たとえば1993年、1860件の殺人事件を調べた研究では、家に銃のある家庭では家族や親しい者に殺されるリスクが著しく高かった。また2014年の調査でも銃へのアクセスが容易な状況と殺人や自殺の発生の相関が確認された。もしも銃が無くなれば不安に襲われる者もいるが、「データによればそれはまやかしの不安だ」。ミラーは語る。

銃社会から銃が無くなれば寂しく思う人もいるかもしれない。しかしレクリエーション・ハンティングの世界はライフルから弓や矢を使ったものへと変化するのではないかとミラーは指摘する。射撃場へ訪れる人々、趣味として武器を収集する人々にとっても同様だ。彼らは単純に別の楽しみを見出すだろう。だが一部の愛好家はがっかりすることになる。「テレビなんを買うよりも銃を買うのが楽しいのだという人は残念だが、銃が無くなることで多くの人の命が救われるし、それは銃に関する娯楽よりも価値のある物だと思う」。ミラーは語る。
翻訳元: What if all guns disappeared

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Author:じょなさん
元バックパッカーの引きこもり、世界に飛び出す引きこもり。当初は役立つ情報を、と思っていたんだけど自分の興味しか書けないね。

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